~人間学言志四録より~
当今の毀誉は 懼(おそ)るるに足らず。後世の毀誉は懼る可(べ)し。
一身の得喪(とくそう)は慮るに足らず。子孫の得喪は慮る可し。
*毀誉-そしるとほめる *得喪-利害、損失
(訳)
当世において人に毀(そし)られたり、褒められたりすることは、おそれる必要はない。後世何十年か、何百年か後になって、あの人は立派な人であったとか、あの人はつまらぬ人であったとかと評価されることは、おそれなければならない。また、今の自分の利害、得失ということは心配する必要はない。子孫が幸福になるか、不幸になるかということは終始考えなければならない。
人間は案外に精神的に独り立ちしないものである。終始、自分に対する他人の意志、感情、批評を気にしている。甚だしいのは誰が自分をどういった、こういったということで自分の全部が揺り動かされて、一喜一憂している者もある。それほど毀誉というものは人間にとって深刻な問題である。
しかし本当の人物たるものは、世間の俗眼者流の批評などに動かされずに、あくまで自己の信ずる道に生きる者でなければならない。現代では、メディアや雑誌、SNS等を通じて、誰もが無責任に相手を批判し、批判を受ける時代である。どんなに周囲から批判があろうとも、大義と道理が確信出来たならば、決断し実行しなくてはならない局面は、リーダーには、必ずある。