2017.07.4
#29「自己喪失」
己を喪(うしな)うと、人を喪ってしまう。人を喪うと、財物も喪ってしまう(佐藤一斎:言志四緑-120より)
すべて事をなすには、自分ひとりでできるものはない。小にしては一家の経営から、大にしては大企業の経営、さらに国の政治・経済に至るまで、多くの人々の協力があって事が運ばれる。社長1人がいかに威張ってみても、幹部をはじめ従業員がついてこなければ経営はできない。その協力を得る中心は例えば会社なら社長自身である。これが駄目だと人の協力を得られなくなる。人の協力を得られなければ、事業経営はうまく行かない。従って物の生産もあがらず経済も破綻してしまう。すなわち「人を喪えば物を喪う」ということになる。一斎は人を喪い、物を喪う根元は「己を喪う」からであるという。己を喪うとは、あるべき「自分・自己」がくずれ、正常性をうしなってしまうことである。
政治も教育も、産業も経済も、結局は、その事に当たる人の徳によって運用されるものである。よって「自己喪失」は一切喪失の本であり、自己確立(自分づくり)こそが、一切成長発展の本である。